モクズガニとは
北海道から沖縄まで、日本各地の河川に生息する甲長約5〜6 cmのカニで、濃厚な味が魅力の食材としても広く親しまれています。
ハサミの付け根あたりに柔らかい毛がびっしりと生えており、そこがモクズガニの名前の由来となっています。
(モクズの触り心地はフワフワしていて気持ちいいです。)
日本各地でそれぞれ呼ばれ方が異なり、「モクズガニ」は関東を中心に使われている名前です。
四万十川の名産「ツガニ」は西日本での呼ばれ方だそうです。
ちなみに高級食用として有名な「上海蟹」(チュウゴクモクズガニ)と同じカニの仲間です。
モクズガニの分類
十脚目>短尾下目>モクズガニ科>モクズガニ属>モクズガニ
上海蟹(チュウゴクモクズガニ)とはモクズガニ属まで同じなので非常に近縁種です。
モクズガニの旬の時期
モクズガニは秋から冬にかけて産卵のため海に向かうため、9月から11月くらいまでが旬の時期となります。
この時期になると魚介の専門店では網に入った活きているモクズガニが売られているのを見かけることが出来ます。
モクズガニは北は北海道から南は九州まで日本全国で採られていますが、東京で売られているモクズガニは北海道産が多いようです。
モクズガニの値段
モクズガニはだいたい5〜6匹程度が網に入って売られていて、お店によって値段はまちまちですが、おおよそ2,000〜3,000円程度。
内子を味わえるメスの方が値段が高く、オスより1,000円程度高い値段が付けられています。
モクズガニの購入方法
モクズガニは魚介の専門店で購入が可能ですが、通常のスーパではあまり見かけることがありません。
筆者は上野で購入することが多く、秋であれば上野の”アメ横”、もしくは”アメ横センタービル地下”に行けばほぼ確実にGETできます。
↓もし近くで買うことができない場合、もしくはシーズン以外の時期は通信販売でも購入が可能です。↓
価格:3,850円 |
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モクズガニのオス・メスの見分け方
カニのオス・メスの見分け方は非常に簡単。
お腹をひっくり返してもらって、袴の広さを見れば一目瞭然です。
袴が広いのがメス。卵を抱えるために大きな袴を持っています。
袴が狭いのがオスです。
この見分け方は「モクズガニ」に限らず、「毛ガニ」や「ズワイガニ」と言った他のカニについても同様の見分け方ができます。
カニさんはオス・メスの見分け方が簡単でとっても助かりますね!
モクズガニの下処理
モクズガニは生命力が非常に強いカニです。
購入した時は網に入れられてギッシリと詰まっていて、死んでいる様に様に見えますが、家で網から開放してあげると、途端に元気に動き回ります。
もしご家庭でモクズガニの生態を観察したいのであれば、そのまま生簀に移して養うことも可能です。
たまにですが、ペットショップでモクズガニの子供を売っているのを見かけることもあります。
↓もしペットでモクズガニをお迎えしたい場合は通信販売での入手も可能です。
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モクズガニはハサミの力がとても強いので、挟まれるとかなり痛いです。
指先の皮膚の薄い所など、挟まれどころが悪いと皮膚を破られて出血することもあります。
写真の様に背中を掴めば大丈夫ですが、ハサミの可動域は後方までかなり広く、想定外の範囲から挟まれることもあります。
カニの扱いに慣れていれば問題ないですが、慣れていない方は複数の元気に動き回るカニを同時に相手をするのは少々骨が折れますので軍手等があると便利かと思います。
(一匹に気を取られている時に別のカニから指を挟まれるというのは良くあることです。)
モクズガニの締め方
調理の前にカニを締める必要があるのですが、方法としては口から金串を刺して少し上下させて神経?を断ち切る方法と、氷に浸けて締める方法があります。
何十匹と言う大量のカニを締めるのであれば氷が便利ですが、個人で数匹程度を締めるのにわざわざ大量の氷を消費して時間をかけるのは少々具合が悪いため、結果として金串を使う方法になります。
ですが、実際に活きている生物を締めるという行為は何度やっても慣れません。。
モクズガニの調理方法
モクズガニの料理方法は主に
- 塩茹で
- 蒸し
- 味噌汁
がありますが、ネットで調べてみると「炊き込みご飯」というのも結構メジャーな調理方法の一つの様です。
また、「がん汁」というカニを潰して鍋の様にして食べる大分の郷土料理も有名です。
調べてみると大分以外でも同様にして食べる地方もある様です。
今回は「塩茹で」「味噌汁」「がん汁」「炊き込みご飯」の食べ方のご紹介をしていきます。
食べる際には必ず熱処理をして絶対に生で食べないようにしてください。
モクズガニの塩茹で
一番有名どころの食べ方「塩茹で」。
鍋に水を張り、3%の食塩水を造って水から茹でていきます。
カニは味噌が溢れない様に甲羅を下に向けて茹でていきます。
水が沸騰してから約15〜20分程度で茹で上がりです。
茹でたての温かい所を食べてもいいのですが、冷蔵庫で冷やして味噌をしっかりと固めてから食べるとカニ味噌の風味が強く感じられてオススメです。
筆者は冷蔵庫で冷やしてから翌日に食べることが多いです。
モクズガニの食べ方
モクズガニの一番の楽しみはカニ味噌。上海蟹のそれに似た、香り高い濃厚な味わいが楽しめます。
食べ方としては、まずは甲羅を剥がし、甲羅の裏側の味噌を味わいます。
シーズンを迎えたモクズガニのカニ味噌は甲羅の裏にびっしりと詰まっていて、木の実のような豊潤な香りと濃厚なコクと滑らかさが楽しめます。
カニ味噌好きな方にとってはモクズガニさん万歳ですね。
安くて旨い、秋限定の味です。
メスのモクズガニにはこの様にオレンジ色の内子が入っています。↓
ポリポリとした食感、淡い味。それをカニ味噌と一緒に食べたときのコンビネーションは最高です。
やはりお値段が高いだけあって、蟹味噌に関してはメスの方が美味しいです。
次に、身は半分に割ってエラを取って食べます。
身を竹串などでほぐしてもいいのですが、めんどくさいので筆者はガブっとかぶりついて殻ごと全部食べます。
足は細いので食べるのには少々苦労するかもしれませんが、写真のように十分な身がありますのでカニハサミなどを使って上手に捌いて頂いて下さい。
モクズガニの味噌汁
味噌汁はモクズガニのだし汁に味噌を溶かして薬味を加えて完成です。
カニの風味がほのかに香るお味噌汁。
とっても簡単な上に、エビカニ系の味噌汁はどうやって作っても旨くなります。
味噌汁は甲殻類では鉄板の料理の一つです。
がん汁(がに汁)
大分の郷土料理、モクズガニを潰して頂く「がん汁」の作り方と味についてご紹介します。
材料は最低モクズガニと塩だけあればOKです。ただ、カニをすりつぶす必要があり、スリコギですと一苦労ですので、一般家庭で作る場合は「フードプロセッサー」があると便利です。
がん汁の材料
がん汁の材料はモクズガニと味付けの調味料、塩、醤油、みそがあれば十分です。郷土料理のレシピを見てみると高菜、かつお菜を入れることも多い様です。
また、秋ナスを入れるところもあるそうです。
今回は大きめのオス3匹を使い、2人前を作りました。
がん汁の調理方法
1 モクズガニの下処理
モクズガニをよく洗い、甲羅を外してエラを取ります。
この後フードプロセッサーにかけますので、予めキッチンバサミで細かく切っておきます。
(蟹が大きすぎると、家庭で使う大きさのフードプロセッサーだと粉砕できない場合があります)
カニミソは料理の最後で汁に加えるので今は取っておきます。
また大きなモクズガニのハサミはかなり硬く、一般のフードプロセッサーでは刃が立たないので今回は使いません。
後で茹でる等して頂きます。
2 モクズガニの汁の抽出
がん汁にはモクズガニをすりつぶして出来た汁を使いますので、フードプロセッサーで細かくしながら汁を抽出します。
予めキッチンバサミで細かくしたモクズガニを水と一緒にフードプロセッサーにかけ、汁を濾していきます。
フードプロセッサーの大きさや性能によるかと思いますが、筆者の使っている家庭用の小さなものであれば小分けにして、様子を見ながら4〜5回程度行う必要があります。
↓こちらは一度目の処理後。まだまだ粗いのでもっと細かくなるまで同じ作業を繰り返します。
↓こちらが何度かフードプロセッサーにかけた後の写真です。だいぶ細かくなりました。
ぎゅーっと絞って貴重なエキスを一滴も無駄にすることなく抽出します。
3 抽出したカニ汁の加熱
3匹分をすりつぶしてお鍋に半分以上貯まりました。
透明度ゼロ、セメント色で濃厚煮干しラーメンのスープの様です。
こちらの汁を沸騰しない様に温めていきます。
温まってきたらお塩を加えます。
今回はがん汁の素材の味を確かめたかったので味付けは塩のみ、2つまみ程度を入れました。
一般的には塩の他に醤油や味噌を加えて味付けをしていきます。
温めてからしばらくすると写真の様に”ふわふわとした物”が固まり始め、濁った汁が透明になってきました。
ある程度固まってきたところでカニ味噌を投入します。
カニ味噌投入後に一煮立ちをさせてたら完成です。
「がん汁」味の感想
ふわっとカニの良い香りがする「がん汁」。
カニのエキスを固めた、”ふわふわ”のこの不思議な料理は人生初めてです。
舌触りは非常に柔らかく、口の中で溶けていく感じはなんとも言えず独特。
カニの”ふっと”鼻に抜ける香りと風味、”ふわトロ”な独特な食感は他の食べものには形容し難いけれども
非常に美味しい!!!
「がん汁」の作り方をネットで調べていた時に、味の感想も書いてあることが多かったのですが多くは「濃厚なカニの味がする」と書かれていました、
個人的には、実際食べてみた感じでは”濃厚なカニの味”というよりは、ほんのりとカニの良い香りがする”非常に淡い上品な味”でした。
今回は塩を二つまみだけで味付けをしているので他の調味料不使用、ほぼカニ100%の味の仕上がりですが、十分美味しいかったです。
カニの風味はとても繊細なので、あまり味を加えず、素材を楽む調理が良さそうに感じました。
大きなカニはそのまま茹でたり蒸したりして食べるのが良いと思いますが、小さくて身を解しづらいカニは「がん汁」にすることで無駄なく、そして美味しくいただくことが出来ます。
「がん汁」食材を無駄にせずに美味しく頂ける、素晴らしい料理です。
↓非常に手間がかかる料理ですが、調理済みのの「がん汁」も販売されているのでもし興味があればお試しください。↓
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モクズガニの炊き込みご飯
今回苦戦したのがこちらの炊き込みご飯です。
何が苦戦したのかは後述するとして、とりあえずレシピから紹介していきたいと思います。
材料
- お米1合
- モクズガニ1〜2杯
- モクズガニの出し汁 150ml
- 調味酒 大さじ1杯
- 醤油 小さじ2杯
- 鶏ガラの出汁 少々
- 塩 少々
- 具材(にんじん・しめじ・ごぼう・油揚げ等)お好みで
調理方法
1.モクズガニの調理
モクズガニのだしが出やすいようキッチンバサミなどで半分に切り、モクズガニを茹でて出汁をとります。
出し汁はご飯を炊く時に使いますので捨てずに残しておきます。
2.炊き込みご飯の準備
1で作っただし汁を使いご飯を炊きます。
お米1合に2で作っただし汁、その他モクズガニの身や炊き込みご飯の具材を加えてご飯を炊きます。
醤油小さじ2杯。
調理酒大さじ1杯。
その他諸々加え、炊き込みます。
完成。とっても簡単で、普段料理しない人でも問題なく作ることができます。
カニ感”ゼロ”の美味しい炊き込みご飯ができました。
お米一合に対してカニ1杯は少なかったのかもしれません。
リベンジします。
モクズガニの炊き込みご飯 リベンジ
「3人よれば文殊の知恵」、「3本の矢」、「ジェットストリームアタック」
3倍というのは特別な数字ですのできっといい結果が出そうです。
3匹使うことでかなり濃厚なだし汁が取れました。
前回の1匹の時の白い出汁の色とは違い、今回は濃い茶色となっており、香りも非常に濃厚です。
前回と同じ手順、具材で調理します。
今回は油揚げを入れました。
お米1合にモクズガニ3匹を使った「モクズガニの炊き込みご飯×3倍」が完成。
香りはかなりカニの雰囲気が出ています。
それでは「モクズガニの炊き込みご飯×3倍」をいざ頂きます!
「おぉ!!! こ、、これは。。」
おしまいに
炊き込みご飯は筆者の作り方が悪かったのかもしれませんが、カニの風味があまり、というか、ほとんどありませんでした。
三匹を使ったときは香りは強いのですが、味はやはりそれほどカニの風味が感じられませんでした。
ほんのりとカニのまろやかさが感じられて非常に美味しい炊き込みご飯ができたのですが、カニを使っていると言われなければ気づかないレベルの”ほんのり”さでした。
上海蟹は一杯で2,000円前後する高級食材ですが、同じ属のモクズガニは国産の安くて美味しい、秋の味覚です。
もし食べたことがない場合はぜひこのモクズガニを一度味わってみてください。
濃厚で複雑な蟹味噌の味、カニ好きの方なら絶対好きになること間違いなしです。